「この土地に分譲住宅を建てて販売したい」「市街化調整区域に商業施設を誘致したい」「古い家を建て替えたいのに、接道義務を満たしていないため再建築不可と言われた」——不動産開発や建築に関わる方なら、一度は直面する課題です。
土地があっても、自由に建物を建てられるわけではありません。特に、一定規模以上の宅地造成を行う場合や、市街化調整区域で開発を行う場合には、都市計画法に基づく開発許可という手続きが必要です。この許可を得ずに開発を進めると、工事の中止命令や原状回復命令が出され、最悪の場合、刑事罰(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科せられる可能性があります。
しかも、開発許可の手続きは極めて複雑です。技術基準、立地基準、関連法令との調整、近隣住民への説明など、クリアすべき要件は多岐にわたります。「こんなに大変だとは思わなかった」「途中で計画が頓挫した」という声も少なくありません。この記事では、開発許可について、実務的な視点から分かりやすく解説していきます。
開発許可とは、都市計画法に基づき、一定規模以上の土地の区画形質の変更(開発行為)を行う際に必要となる許可のことです。区画形質の変更とは、具体的には、道路や水路の新設・変更(区画の変更)、切土・盛土による造成(形状の変更)、宅地以外の土地を宅地にすること(性質の変更)を指します。
都市計画法は、無秩序な市街化(スプロール化)を防止し、計画的な都市づくりを実現するために、開発行為を規制しています。適切なインフラ整備、防災上の安全性確保、周辺環境との調和などを担保するために、開発許可制度が設けられているのです。
開発許可が必要となる主なケースは、次のとおりです。市街化区域で1,000㎡以上の宅地造成を行う場合。市街化調整区域で原則としてすべての開発行為を行う場合(規模を問わず)。非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域)で3,000㎡以上の開発行為を行う場合。都市計画区域外で1ha以上の開発行為を行う場合。
特に注意が必要なのは、市街化調整区域です。この区域は「市街化を抑制すべき区域」と位置づけられており、原則として開発が厳しく制限されています。規模に関係なく、ほぼすべての開発行為に許可が必要となります。
開発許可が必要となる規模は、土地が所在する区域によって異なります。これを理解することが、開発計画の第一歩です。
| 区域の種類 | 開発許可が必要な規模 | 特徴 |
|---|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡以上 | すでに市街地を形成している区域。比較的開発が容易 |
| 市街化調整区域 | すべての開発行為(規模を問わず) | 市街化を抑制すべき区域。開発が厳しく制限される |
| 非線引き区域 | 3,000㎡以上 | 市街化区域・調整区域の区分がない都市計画区域 |
| 準都市計画区域 | 3,000㎡以上 | 都市計画区域外で、一定の規制が必要な区域 |
| 都市計画区域外 | 10,000㎡(1ha)以上 | 都市計画の規制が及ばない区域 |
この表から分かるように、市街化区域での1,000㎡以上の開発や、市街化調整区域でのあらゆる開発には、必ず許可が必要です。「自分の土地だから自由に造成できる」という考え方は通用しません。
また、開発許可が不要な例外もあります。農林漁業用の建築物(農業用倉庫、畜舎など)の建築を目的とする場合、公益上必要な建築物(駅、図書館、公民館など)の建築を目的とする場合、都市計画事業の施行として行う場合などです。ただし、これらの例外に該当するかどうかの判断は専門的で、慎重な確認が必要です。
開発許可を得るためには、技術基準と立地基準という2つの基準を満たす必要があります。
技術基準は、開発行為の安全性や公共性を確保するための基準です。市街化区域、市街化調整区域を問わず、すべての開発行為に適用されます。
これらの基準を満たすためには、造成計画図、排水計画図、道路計画図などの詳細な設計図書が必要です。
立地基準は、市街化調整区域における開発行為にのみ適用される、より厳格な基準です。市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域であるため、原則として開発が認められません。しかし、次のような例外的な場合に限り、許可される可能性があります。
市街化調整区域での開発は、これらの例外規定に該当するかどうかを慎重に検討する必要があります。商業施設を誘致したい場合、「周辺居住者の日常生活に必要」という要件を満たせるかどうかが重要なポイントになります。
建築基準法では、建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないという接道義務が定められています。この要件を満たしていない土地は、原則として建築確認が下りず、建物を建てることができません(再建築不可)。
昭和25年の建築基準法施行前に建てられた古い住宅の中には、この接道義務を満たしていないものが多数存在します。こうした土地で建て替えを行いたい場合、次のような対応が考えられます。
①建築基準法第42条第2項道路(セットバック)
前面道路の幅員が4m未満でも、特定行政庁が指定した道路(2項道路)であれば、道路中心線から2mセットバックすることで建築が可能になる場合があります。
②建築基準法第43条第2項の許可(接道義務の例外許可)
接道義務を満たさなくても、敷地の周囲に広い空地があるなど、特定行政庁が安全上支障がないと認める場合には、建築審査会の同意を得て許可される場合があります。
③開発許可による道路の新設
周辺の土地を含めて開発許可を取得し、基準に適合した道路を新設することで、接道義務を満たす方法です。複数の土地をまとめて開発する場合に有効です。
再建築不可の問題は、個別の状況によって対応策が異なります。専門家による現地調査と、建築指導課・開発審査課との事前協議が不可欠です。
開発許可の取得には、長期間と多くのステップが必要です。標準的な流れは次のとおりです。
対象地の都市計画上の位置づけ、用途地域、開発許可の要否、関連法令(農地法、森林法、文化財保護法など)の規制、インフラ整備状況(道路、上下水道など)などを調査します。
開発担当部局、道路管理者、河川管理者、上下水道管理者、消防、警察、教育委員会など、関係各課との事前協議を行います。この段階で、計画の妥当性、技術基準への適合性、必要な協議・同意などが確認されます。市街化調整区域の場合、立地基準への適合性も厳しく審査されます。
開発の規模や内容によっては、近隣住民への説明会開催や同意取得が必要になります。特に大規模開発の場合、住民の理解を得ることが重要です。
膨大な申請書類を作成し、提出します。主な書類は、開発許可申請書、設計説明書、土地利用計画図、造成計画平面図・断面図、道路計画平面図・縦断図・横断図、排水施設計画平面図・縦断図、給水施設計画図、がけの断面図、公園等の設計図、開発区域の位置図、地形図、登記事項証明書、公図の写し、土地の権原を証する書類、関係権利者の同意書、関係行政機関との協議書、資金計画書、工事施行者の資格を証する書類などです。
都道府県または市町村の開発審査課で、技術基準・立地基準への適合性が審査されます。必要に応じて補正や追加資料の提出が求められます。
審査に合格すると、開発許可が交付されます。許可書には、許可条件が付されることがあります。
開発工事は、開発許可書の交付後に着工できます。
許可を受けた後、工事に着工します。許可内容と異なる工事を行う場合は、変更許可が必要です。
工事完了後、完了届を提出し、行政による完了検査を受けます。検査に合格すると、「検査済証」が交付されます。
検査済証の交付を受けた後、建築確認申請を行い、建築工事に着手できます。
トータルで、事前協議開始から開発許可取得まで、最短でも6か月程度、市街化調整区域や大規模開発の場合は1年以上かかることも珍しくありません。
開発許可と建築確認は、別個の手続きです。両方が必要な場合、まず開発許可を取得し、開発工事の完了検査を受けた後に、建築確認申請を行います。
| 手続き | 根拠法令 | 目的 | 審査内容 |
|---|---|---|---|
| 開発許可 | 都市計画法 | 無秩序な市街化の防止、計画的な都市づくり | 道路、排水、公園等のインフラ整備、造成の安全性 |
| 建築確認 | 建築基準法 | 建築物の安全性、衛生性の確保 | 構造、防火、採光、換気などの建築基準への適合性 |
開発許可を受けた土地であっても、建築する建物については別途建築確認が必要です。両方の手続きをスムーズに進めるためには、計画段階から両者の整合性を考慮する必要があります。
開発許可申請は、宅地開発のプロであるハウスメーカーや不動産業者であっても、自社で完結させることが難しい手続きです。多くの事業者が行政書士に依頼されるのには、明確な理由があります。
対象地が開発許可の対象となるか、どのような規制がかかっているか、技術基準・立地基準を満たせるかなど、開発の可能性を総合的に調査・判断します。都市計画課、開発審査課、道路管理者、河川管理者などでの調査を代行します。「そもそも開発できるのか」という根本的な疑問に答えます。
開発許可だけでなく、農地転用許可、森林法の開発許可、道路占用許可、河川占用許可、文化財調査など、関連する許認可手続きを洗い出し、必要に応じて他の専門家(土地家屋調査士、測量士、建築士など)と連携しながら、トータルでコーディネートします。
開発担当部局をはじめ、道路、河川、上下水道、消防、警察など、多数の関係機関との事前協議を代行します。各機関の要求事項を整理し、計画への反映をサポートします。「どこに何を協議すればいいのか分からない」という不安を解消します。
土地利用計画図、造成計画図、道路計画図、排水計画図など、専門的な図面を含む膨大な申請書類を作成します。測量士や土地家屋調査士が作成した測量図・求積図をもとに、開発許可に必要な図面に仕上げます。「どんな図面が必要か分からない」「図面の作り方が分からない」という悩みに対応します。
開発許可申請書類の提出を代行します。審査過程で補正指示や追加資料の要求があった場合も、迅速に対応します。行政との連絡・調整を一手に引き受けることで、事業者の負担を大幅に軽減します。
工事完了後の完了届の提出、完了検査の立会い、検査済証の受領まで、フォローします。「許可を取ったら終わり」ではなく、検査済証取得までサポートします。
市街化調整区域での開発は、立地基準が厳しく、許可取得のハードルが非常に高くなります。行政書士は、第34条各号のどの規定に該当するか、どのような計画にすれば許可される可能性があるかなど、実績に基づいたアドバイスを提供します。
開発許可申請は、都市計画法をはじめ、建築基準法、農地法、森林法、道路法、河川法など、多数の法令が複雑に絡み合う手続きです。しかも、行政の裁量部分が大きく、事前協議での調整が成否を分けます。確実に許可を取得し、計画を実現するためには、専門家のサポートが不可欠です。
市街化区域では1,000㎡以上の開発行為に開発許可が必要ですので、900㎡であれば原則として開発許可は不要です。ただし、建築基準法に基づく建築確認は必要です。また、道路位置指定、がけ条例、宅地造成等規制法などの他の規制がかかる可能性がありますので、事前に特定行政庁の建築指導課等で確認することをお勧めします。
市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域であるため、原則として商業施設の建築は認められません。ただし、都市計画法第34条第1号の「日常生活に必要な店舗で、周辺居住者の利便を図るために必要なもの」に該当する場合や、同条第11号・12号の条例で指定された区域内であれば、許可される可能性があります。周辺の人口、既存店舗の状況、施設の規模・内容などを総合的に判断する必要がありますので、専門家にご相談ください。
開発の規模や内容、所在する区域によって大きく異なります。市街化区域の比較的小規模な開発で、事前協議がスムーズに進んだ場合、事前協議開始から許可取得まで6か月程度が目安です。市街化調整区域での開発や、大規模開発、農地転用や森林法の許可が必要な案件などでは、1年以上かかることもあります。余裕をもったスケジュールを組むことが重要です。
無許可で開発行為を行うと、都市計画法違反となり、次のような措置が取られます。都道府県知事等から工事の停止命令や、開発許可の申請命令が出されます。命令に従わない場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。また、違反した開発行為について原状回復命令が出される場合もあります。多大な損害が発生しますので、必ず許可を取得してから工事に着手してください。
再建築不可の主な理由は、接道義務を満たしていないことです。対応策としては、①前面道路が建築基準法第42条第2項道路(いわゆる2項道路)に該当する場合、セットバックして建築する、②建築基準法第43条第2項の許可(接道義務の例外許可)を建築審査会の同意を得て取得する、③隣地を購入または借りて接道義務を満たす、④周辺の土地と一体で開発許可を取得し、基準に適合した道路を新設する、などがあります。個別の状況によって対応策が異なりますので、まずは現地調査と建築指導課・開発審査課での相談が必要です。
宅地造成、商業施設の誘致、再建築不可の問題解決——いずれも、適切な手続きを経ることで実現可能です。しかし、都市計画法に基づく開発許可は、日本の許認可手続きの中でも最も複雑で専門性が高いものの一つです。
技術基準、立地基準という二重のハードル、多数の関係機関との事前協議、膨大な申請書類、厳格な審査——これらを一つひとつクリアしていくには、専門的な知識と経験、そして行政との粘り強い調整が不可欠です。
「この土地で開発ができるか知りたい」「市街化調整区域での開発を実現したい」「再建築不可の土地を何とかしたい」「開発許可の手続きを任せたい」——どんな疑問や不安でも構いません。
開発許可の申請にお悩みの際は、お気軽にお尋ねください。
あなたの開発計画を、一緒に実現していきましょう。まずは対象地の状況と計画の概要をお聞かせください。そこから、最適な進め方をご提案させていただきます。複雑な手続きも、専門家と一緒なら必ず乗り越えられます。あなたのビジョンの実現を、全力でサポートいたします。