任意後見とは

~「もしも」の備え、できていますか?~


 高齢化が進む現代、「判断力が低下したときの備え」は誰にとっても重要なテーマです。
 けれども、多くの方が「自分はまだ元気だから」「うちには子どもがいないけど何とかなるだろう」と、つい先送りにしてしまいます。


 しかし、いざという時に「誰に任せるか」「どうしてほしいか」を事前に決めておくことは、自分自身の尊厳を守るとともに、家族や周囲の人の負担を軽くする大切な準備です。
 任意後見制度は、そんな“まだ元気なうちに考えておくべき大事なこと”のひとつです。


 この記事では、制度のしくみや手続きの流れ、法定後見制度との違い、そして行政書士にできるサポート内容まで、わかりやすくご紹介します。

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 こんなお悩み・心配ごとはありませんか?

  • 将来認知症になったとき、自分のお金の管理は誰に任せるのか不安
  • 子どもがいない夫婦で、どちらかにもしものことがあったら心配
  • 身近に頼れる親族がいないが、身の回りのことを誰かに見守ってほしい
  • できるだけ迷惑をかけず、老後を自分らしく過ごしたい

 これらは決して特別なケースではありません。実際に、相談を受ける方の多くが「自分たちにも必要かも」と感じたことをきっかけに動き出されています。
 「まだ早いかも」と思っている今こそ、考えるタイミングです。

任意後見制度とは?

◎制度の概要
 任意後見制度とは、「判断能力があるうちに、自分が信頼できる人(任意後見人)をあらかじめ契約で決めておく制度」です。
 将来、認知症などで判断能力が低下したときに備え、財産管理や生活支援について、自分の希望に沿った内容をあらかじめ契約で定めておきます。


◎利用の流れ
1.契約の準備
 任意後見人候補者と支援内容について合意し、公正証書で「任意後見契約」を締結します。
2.判断能力が低下
 認知症などで本人の判断能力が不十分になった場合、家庭裁判所に申し立てを行います。
3.任意後見監督人が選任される
 家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見契約が発効します。
4.後見人による支援開始
 任意後見人が、財産管理や生活支援などの後見業務を開始します。

法定後見制度との違い

 「任意後見」と「法定後見」の違いを整理すると、次のようになります。

項目 任意後見制度 法定後見制度
開始時期 判断能力があるうちに契約 判断能力が不十分になった後に申立て
後見人の選任者 本人が自由に選べる 家庭裁判所が選任
後見内容の決定方法 本人の希望に沿って自由に契約できる 家庭裁判所が決定
契約方法 公正証書で任意後見契約を結ぶ 家庭裁判所に申立てが必要
柔軟性 高い(見守り・死後事務契約とセットにできる) 低め

任意後見制度をより安心して利用するために

 任意後見制度は、単体でも大きな安心をもたらしますが、さらに以下のような契約と組み合わせることで、より柔軟で実効性のある備えが可能になります。


見守り契約
 任意後見契約を発効させる前段階で、定期的な連絡や訪問による生活状況の確認を任せる契約です。
 「まだ元気だけど、いざというときのために誰かに見守っていてほしい」という方に適しています。
死後事務委任契約
 死後の事務(葬儀・納骨・役所への届出・遺品整理など)を信頼できる人に任せておく契約です。
 特に身寄りのない方や子どものいないご夫婦にとって、大きな安心となります。

行政書士にできること

 任意後見制度の利用には、専門的な知識と丁寧な準備が必要です。
 行政書士は、次のような場面でみなさまの安心をサポートいたします。

  • ご本人の希望に沿った契約内容の設計
  • 任意後見契約書の起案および公証役場での手続きサポート
  • 見守り契約死後事務委任契約などとの組み合わせのアドバイス
  • 後見人候補者の選び方や、実務上の注意点のご説明
  • 必要に応じて、司法書士や弁護士など他士業との連携による総合的支援

 「何を誰に任せるか」「どこまでしてもらうか」を自分で決められる制度だからこそ、プロのサポートで納得のいく形に仕上げることが大切です。

よくあるご相談

任意後見人に家族以外を選んでも大丈夫?

はい、信頼できる第三者(知人、行政書士など)でも契約は可能です。

契約した後に気が変わったら?

本人に判断能力がある間であれば、契約の内容変更・解除は可能です。

費用はどれくらい?

公正証書作成の費用や、行政書士への報酬などがかかりますが、内容によって異なりますので事前にご案内いたします。

まずは一歩、未来の安心のために

 任意後見制度は、将来の「もしも」に備える心強い制度です。
 でもその一歩が、不安だったり、難しそうに思えたりする方も少なくありません。
 当事務所では、専門用語を使わず、ゆっくり丁寧にご説明し、無理のないペースでご準備を進めていただけるよう心がけています。


 「自分のことを信頼できる誰かに託しておきたい」
 「子どもがいないので、老後の備えを考えておきたい」
 そんなお悩みがある方は、まずはお気軽にお尋ねください。